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No.19「駅馬車」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.19  2008.4.26発行 

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1939年/アメリカ 「駅馬車」より


名匠ジョン・フォード監督の傑作西部劇。
ロードムービー、群像劇、会話劇、人間ドラマ、アクション、ロマンス……
多彩なテイストをたっぷりと盛り込みながら、
絶妙な人間描写でコーティング。
ムダのない99分に映画の醍醐味が凝縮されている。


アリゾナのトントから荒野を横切り、
目的地のローズバーグへと向かう駅馬車に、
9人の主人公が乗り合わせる……。


さて、そんな物語のプロローグ。
駅馬車に乗り込む前のシーン。


主人公のひとり、アル中気味の医師ブーンは、
文無しで宿屋から追い出された。
そこに偶然、商売女のダラスが通りがかる。
彼女も、矯風会(悪い風俗を正す会)のおばさん連中に目をつけられ、
町から追い出されようとしていた。


ダラスは知り合いであるブーンを見つけると、駆け寄る。


 ダラス:「追い出されたくないわ……、
      こんなのってある? 私が何をしたっていうのよ!」


ブーンも同調する。


 ブーン:「我々は社会的偏見という病気の犠牲者だ。
      矯風会は町のゴミを一掃したいのだ」


そう皮肉を言ってから、
自信満々にこう叫んだ——


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     「いざ、誇り高きゴミとなれ!」                 


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酔いどれのブーンと酒場女のダラス。
折り目正しく生きる矯風会のメンバーにとって、
彼らは町の綱紀を乱す欠陥人間に見えるのだろう。
だから、ゴミ扱いしたワケだ。


通常、自分が他人からゴミ扱いされたとき、
「俺はゴミじゃない!」と反発するか、
あるいは、
「どうせ俺はゴミだよ……」と意気消沈するか、
二者択一ではないだろうか。
当事者の心情としては。


ところがブーンは、そんな選択肢には目もくれず、


     「いざ、誇り高きゴミとなれ!」  


と言い放ったのである。


たしかにブーンは、呑んだくれのぐうたら人間だが、
人間としての尊厳だけは失うまいと踏ん張ったのである。
自分がゴミであることを認めながらも、
ゴミである自分に胸を張る。
己を恥じまいとするブーンの姿勢は、
ある意味、潔い。


少なくとも、自分のことを完全無欠だと思い込んでいる人間よりも、
客観的に自分というものが見えているし、
エリート意識が強い割に自分を誇ることのできない人間よりも、
格段に魅力的である。


哲学者ソクラテスの名言「無知の知」を
ご存じの人は多いだろう。
自分自身が無知であることを知っている人間は、
自分自身が無知であることを知らない人間より賢い、という意味だ。


もちろん、ブーンをそこまで持ち上げようとは思わない。
だけども、


     「いざ、誇り高きゴミとなれ!」 


というセリフには、思わずニタリとさせられる。


どれだけダメでも、
どれだけ弱くても、
どれだけカッコ悪くても、
どれだけ至らなくても、
そして、いくらゴミだとしても、
それを誇れる自分がいたら、それでいいじゃないか。


そう思わせてくれる名言である。


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●編集後記             
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「駅馬車」におけるブーンは、
基本的にアルコール依存が激しいダメ男です(とくに前半は)。
一方、同じ馬車には、エリート風情な銀行頭取も乗り込みます。
どちらが社会的に高い地位を得ているかは、
ふたりの容姿や所作を見れば一目瞭然ですが、
映画が幕を下ろすころには、ふたりに対する見方が、
(前半と比べて)ずいぶんと変化します。
そのあたりのギャップも、この作品の大きな魅力といえます。


脱獄囚に扮する若きジョン・ウェインの仕草や、
荒野を舞台にくり広げられる迫力満点のアパッチ襲撃シーン、
主人公全員の人生を、さり気なく浮かび上がらせる語り口の巧さ……等々、
あらゆる点で見どころが満載の歴史的名作です。


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■銀幕をさまよう名言集! No. 19「駅馬車」


マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗


●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
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