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No.36「俺たちに明日はない」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.36  2008.10.21発行 

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1967年/アメリカ 「俺たちに明日はない」より


世界恐慌時代のギャング、
ボニーとクライドの出会いから死までを描いた
アメリカの映画史に残る名作のひとつ。


お色気ムンムンの女性ボニー。
ある日、彼女が自宅の窓から道路に目をやると、
青年クライドがクルマを盗もうとしていた……。


そんなエピソードから始まる物語。


ボニーは、クライドのインモラルな
言動や行動に魅せられ、
一緒になって強盗などの犯罪に手を染めるようになる。


ふたりの名は、
頻繁に新聞に載るようになり、
いつしか有名人になっていた。


そんなある日、
ボニーの気弱さが顔をのぞかせた。
「ママに会いたい」というのだ。


ボニー  「とても気が沈むのよ」


クライド 「ママのせいだろ」


ボニー  「ママと暮らしたいわ。
      もう年寄りだし……
     (今の私には)もうママもいない。
      身内もいない……」


クライド 「ここにいるさ」


そういってクライドは、
ボニーを抱きしめる。


が、ボニーはクライドの胸元で、
弱々しい声でこう言った——


☆★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


     「初めのうちは、世界を征服したみたいだった…」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆★☆


だけど、とばかりにボニーは続ける。


     「もう終わりね。逃げるだけよ」


何ら代わり映えしない、
刺激のない毎日。
そんな日々に飽き飽きしていたボニーは、
クライドと一緒に犯罪をくり返すことで、
今まで経験したことのない
刺激的な毎日を手に入れた。


銃をぶっ放し、
警官たちをけちらし、
銀行に押し入り、
お金を強奪する。
連日、新聞紙面を騒がせ、
世間が自分たちのことを話題にする。
スターにでもなったような気分だったのだろう。


だけど、いくらスターになろうとも、
一度犯罪に手を染めたが最後、
あとは、どこまでも逃げ続けなければいけない人生が待っている。
それだけではない。
逃げ続けるためには、
犯行を重ねるよりほかなくなるのだ。


     「初めのうちは、世界を征服したみたいだった…」


つまりは、幻想。
征服はしていなかった、ということだ。


そのことに気づいたとき、
ボニーの胸に去来したのは、
どのような感情だったのだろう?
後悔なのか、反省なのか、不安なのか、寂しなのか……。
それは、彼女の言葉や表情から
読み取るしかない。


法やモラルにツバを吐きながら進む、
華々しく痛快な人生。
だけど、そうした人生を選ぶときには、
そこにある「光」だけではなく、
裏側にある「影」をも一緒に持ち歩かなければならない。


それはきっと、この世の法則で、
「影」だけ置いて行くわけにはいかないのだ。


犯罪に手を染めた瞬間にスタートした、
後戻りのきかないボニーの人生。
あまりに哀しくみじめなその末路が、
この世の法則をクッキリと浮かび上がらせる。


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●編集後記             
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若い男女の犯罪者を主人公にした
アーサー・ペン監督の「俺たちに明日はない」は、
犯罪、セックス、暴力……等々の
ひりひりするような描写をふんだんに盛り込んだ、
それまでのアメリカ映画の主流・典型とは一線を画す、
エポックメイクな作品として知られています。
(いわゆる「アメリカン・ニューシネマ」の古典)


主人公はアンチヒーローで、
結末はアンハッピーエンド。
好き嫌いは大きく分かれると思いますが、
アウトローな生き方ゆえに
表現可能な人間の感情や本質というのも、
あるような気がします。
“甘くない”作品ゆえに、
観る者の感覚を研ぎ澄まさせ、
心に多くの残留物を残します。


87発の銃弾を浴びてふたりが絶命する
映画史上に残る有名なラストシーンは、
壮絶にして、哀しく、
そして、美しいです。


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■銀幕をさまよう名言集! No.36「俺たちに明日はない」


マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗


●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
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