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No.7「善き人のためのソナタ」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.7  2008. 2. 4発行 

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2006年/ドイツ 「善き人のためのソナタ」より


舞台は1984年、ベルリンの壁が崩壊する前の東ドイツ。
国家保安省の局員ヴィースラーは、
国家に忠誠を誓うまじめで優秀な男。
ある日彼は、反体制の疑いがある劇作家ドライマンを
徹底的に監視するよう命じられる。
ドライマンのアパートには盗聴器が仕かけられ……。


東ドイツの恐るべき監視国家の実態に迫りながら、
人間の“善悪”を問うヒューマンドラマだ。


ひどい監視国家だ。
国民はもちろん、芸術家にも自由は許されなていない。
思想も。言論も。表現も。


ドライマンが全幅の信頼を寄せるある舞台演出家は、
国家保安省に仕事をはく奪された。
その男は、ある日、ドライマンに胸の内を打ち明ける——


     「昔は友好的で成功に包まれていた。
      すべてお偉い方たちのおかげだよ……」


     「生まれ変わったら劇作家になりたい。
      思ったまま自由に書ける幸せな作家に。
      君のように……」


と、皮肉まじりに現状を嘆いたあと、
こう言葉を続けた——


     「今は仕事を禁じられた哀れな演出家だ。


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      フィルムのない映写技師、
      穀物のない水車小屋と同じさ。
                       
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      どうにもならん……」


鋭い比喩ではないかもしれない。
だけど、端的で、的を射ている。
彼の置かれた立場が十分に理解できる。


羽をもがれた鳥、というヤツだ。


おそらく優秀な演出家なのだろう。
ドライマンも尊敬の念を抱いている。
だけど、この演出家を救ってあげることはできない。
そう、誰にも。
暴走した国家権力のなんと恐ろしいことよ。


とくに芸術家にとっては、万死に等しい社会である。


      フィルムのない映写技師、
      穀物のない水車小屋と同じさ。


それは、希望のない人生、と言い換えてもいい。


ほどなく、この舞台演出家は、
みずからの手で命を絶つ。


「自殺」という名の、
「国家権力」による殺人とでも言おうか。
だが、その愚行をとがめる力を、
誰も持ち合わせてはいなかった。


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●編集後記             
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「善き人のためのソナタ」は、
国家保安省の局員ヴィースラーが、
劇作家のドライマンとその恋人を監視するなかで、
文学や演劇や音楽をこよなく愛し、
また、慈悲深くお互いを見つめ合う彼らの世界に
少しずつシンパシーを感じていく物語です。
劣悪な社会体制のなかで、
人間を突き動かすものが、
“権力”ではなく、“心”だということを
抑制をきかせた演出で浮かび上がらせた傑作です。
ラストシーンの美しさは出色です。


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■銀幕をさまよう名言集! No. 7「善き人のためのソナタ」
 
マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗

●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
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