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物語「だいふくもち」

2005.12.6


わが家は生協をやっている。毎週、注文した食材を担当者が自宅まで配達してくれるのだ。


今日の昼、チャイムが鳴った。生協だった。


妻はそのとき、大福餅を食べていて、口をもぐもぐさせていた。


そんなとき、皆さんならどうします?


私だったらこうします。


大福餅を皿か何かの上に置き、玄関先に行く。


ほぼ一般的な行動かと。


できれば、ほお張っていた大福餅は飲み込みたいし、


そうそう、口の周りについた白い粉も拭き取っておきたい。


ほぼ一般的な心理かと。


ところが、妻は私が目を離したすきに……


口に大福餅をほおばったまま、大福餅を片手に持ったまま(!)、玄関に行ってしまった……。


当然、驚いた生協の若い男性担当者、言いますがな。


「あっ、お食事のところスイマセン」


そんなとき皆さんならどう答えます?


私ならこう答えます。


「あっ、スイマセン、こんなの持ったまま」(しまった!という雰囲気を醸し出しつつ)


まあ、かなり妥当なリアクションかと。


ところが、ワタシ、妻を見くびってました(10年も一緒に居ながら)。


「あっ、お食事のところスイマセン」と謝る担当者の言葉に対し……


「食事じゃありません。お餅です」


こう言ったのです。


空耳ではありません。


ふつうなら、自分の滑稽な姿に気づき、恥じらってもいい場面で、


相手の言葉を否定し、なおかつ、「お餅です」と言ってのけるとは……。


大福餅がそれほどおいしかったのだろうか?


それとも、おやつである大福餅を「お食事」と言われたことに傷ついたのか?


その真意は分からない。


続きがある。


妻の片手が、大福餅でふさがれているため、生協の担当者がなかなか食材を渡せないでいる。


そのときの担当者の気持ちを代弁するならば、


「今からでも遅くはないから、その大福餅をどこかに置いたらどうです、オクサン?」


ゼッタイ思ってたと思います。


もちろん、そんな空気が読めるような妻ではありません。(読めるなら、最初から大福餅を持って玄関には行かないでしょう)


優しい担当者は、


「あのー、ここに置いておきましょうか?」と言う。


が、ここでも読めないものは読めない。


「いえ、受け取ります」


相変わらず大福餅を片手に握りしめながら、


口の周りに白い粉をつけたまま、


ある意味、毅然とした態度。


「はあ、じゃあまあ」


仕方なく、妻の空いたもう片手に、野菜がぎっしり詰まった袋を渡す担当者。


予想以上に重たかったらしく、ゆらゆら揺れながら、それを受け取る妻。


今さら助け船を出すこともできずに、わが妻を哀れむワタシ。


妻は頑張って食材を受け取ったが、もう片方の手に握られた大福餅からは……


……ハラハラと白い粉が舞い落ちていた。


わが家の初雪。


もうすぐクリスマスですね。

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