「ディレクターズ ノート もうひとつのプロフェッショナル」
2009.11.14

「
『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合 放送毎週火曜日 22:00〜22:48)は、各界の一流どころに密着取材するNHKのドキュメンタリー番組。これまでにイチローや宮崎駿、浦沢直樹、羽生善治など、そうそうたるメンバーを取り上げて、彼らの“仕事の流儀”に迫っている。
この番組で取材を担当した20人のディレクターと、茂木健一郎(番組キャスター)やスガシカオ(主題歌)ほか主要スタッフへのインタビューをもとに構成したのが、本書「ディレクターズ ノート もうひとつのプロフェッショナル」。番組に登場した人たちの語録を並べた単なる焼き直しではなく、『プロフェッショナル 仕事の流儀』の舞台裏——主に取材担当ディレクターたちの奮闘記——をいちから取材し、番組制作サイドから「プロたる仕事」の本質に斬り込んだものだ。
多分に労力を必要とする密着取材だが、取材相手が各界を代表する一流どころともなれば、なおさらに高度な取材能力(人間観察眼を含む)とタフさが必要となる。取材相手の気分を害さないよう細心の注意を払う一方で、ふだんは聞けないような本音を引き出さなければならない。彼らディレクターたちは取材に膨大な時間を割きながら、常に取材相手の仕草や表情に目を光らせ、その発言に耳をそばだてている。
そこには、ディレクターと取材相手の緊張感あふれる駆け引きがある。たとえば、39日目まで取材を終えても、40日目にヘタな質問で相手を怒らせて、「この取材はなしにしましょう」と言われれば、すべてパーなのだから。
本書に描かれているのは、ディレクターたちの熱意であり、好奇心であり、そして産みの苦しみだ。肝心なのは、取材相手とどう付き合い、どう言葉を引き出すかだ。あるいは重要な場面にカメラを近づけさせてもらえるかだ。ディレクターたちは、取材相手との距離感、質問の仕方やタイミング、刻一刻と変わる取材相手の気分……等々、あらゆる情報を勘案しながら“仕事の流儀”を探る。
究極的には、取材相手とどこまで信頼関係を築き上げられるかが、彼ら、ひいては番組にとっての勝負どころなのだろう。そうした難しい役回りを引き受けながらも、ディレクターたちは、なんとか結果を出していく。ドキュメンタリー番組を作る彼らもまた一流のプロフェッショナルなのだ。私自身、取材を生業とするマスコミの端くれとして、勉強になることがじつに多い。
本書「ディレクターズ ノート もうひとつのプロフェッショナル」は、マスコミ関係者&志望者はもちろん、あらゆる分野で「プロフェッショナル」を目指す人にとって実り多き1冊だ。番組に登場した22人のプロフェッショナルと、20人のディレクター、それに番組スタッフ35人のインタビューを取りまとめた本書は、あるいはまた、出版のプロが生み出した総力取材本としても評価できる一冊だ。
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