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「12人の怒れる男たち」

2009.8.31

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先月観劇した東京芸術座の舞台公演「12人の怒れる男たち」。


作:レジナルド・ローズ 訳:額田やえ子 演出:稲垣純


「十二人の怒れる男」といえば1957年に映画製作された密室劇の名作。日本では三谷幸喜の戯曲「12人の優しい日本人」(初演は1990年)が評判を呼び、のちに映画化(1991年)。2007年にはロシアでニキータ・ミハルコフ監督の「12人の怒れる男」なる作品も生まれた。公開から半世紀がすぎた今でもそうした作品が撮られているのは、それだけ咀嚼しがいのある内容だからだろう。


ある少年が父親殺しの容疑で裁判にかけられた。6日間の審理を傍聴し終えた12人の陪審員たちは、有罪か無罪かを決めるべく陪審員室に入ってきた。全員一致で少年の死刑が決まるかと思った矢先、1人の陪審員が無罪に投票。ほか11人の冷たい視線を浴びながら「せめて1時間話し合いましょう」と提案。蒸し暑い陪審員室のなかで、侃々諤々と意見をたたかわせ始めた……。


自白や目撃証言、状況証拠の信憑性に懐疑の目を向けつつ、人間の「偏見」や「思い込み」が生み落とす独善的な裁量に警笛を鳴らしている。人が人を裁く裁判というシステムそのものの不完全さを暴いた作品ともいえる。この作品を悠然と見送れる人はそうはいないはずだ。裁判員制度を導入したばかりの日本人にはとくにタイムリーな作品につき、未見の方は、ぜひ映画版のオリジナルをDVDで鑑賞していただきたい。


駆動力のある人間ドラマだ。出身も育ちも地位も年齢も性格もバラバラ。そんな陪審員12人が、ひとつの事件を子細に検証し直しながら、さまざまな意見・見解をぶつけ合う。ときに議論が殴り合い一歩手前まで白熱するなど、スリリングな会話劇が1時間半以上も続く。


事件の輪郭が少しずつ浮かび上がると同時に、各陪審員のプライドや見栄、自意識、コンプレックスも浮き彫りになる。正義感や良心や詭弁や自己弁護……等々が容赦なく飛び交い、陪審員室は徐々に混沌を極めていく。人によって感情移入できる相手はまちまちだろうし、最初と最後で印象が大きく変わる登場人物もいるだろう。人間心理の多様性、流動性に切れ込んでいる点に、本作を名作たらしめているゆえんがある。


今回観劇した東京芸術座の舞台「12人の怒れる男たち」は、おおむねオリジナルの脚本を踏襲している。役者の力量がすばらしく、若手からベテランまでが、それぞれにひとクセふたクセある役どころを好演(優柔不断で調子のいい若者を演じた藤田順斗、偏見の強い頑固じじいを演じた山村勇人、プライドで固められた初老男性を演じた井上鉄夫、沈着冷静にして勇敢な中年男を演じた手塚政雄らの演技が光っていた)。綿密に編まれた良質の脚本と実力のあるキャスト、ムダなく流れるテンポのよさ。それらを天の配剤よろしくブレンドし、傑作の魅力を余すことなく表現することに成功している。


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