「マンマ・ミーア!」
2009.3.9
去る2月21日、新名古屋ミュージカル劇場にて、劇団四季のミュージカル「
映画「マンマ・ミーア!」の批評は
映画版はもちろん全編英語だが、劇団四季のミュージカルは一部(おもにサビ)を除いては日本語で歌われる。オリジナルの楽曲と比較すると、歌詞や節回しに不自然さを感じる部分もあるが、日本人向けのミュージカルとして成立させるには致し方のないところだろう。
ABBAを日本語でやるマイナス点を補うのが、キャストの体温がリアルに感じられる生の舞台だ。とくに、一つひとつの場面が(映画のように)細かいカットで区切られない舞台では、セリフのかけ合いが基本となるため、おのずと個々のキャラクターが立つ。すると、同じストーリーでも、が然、登場人物が活き活きしてくるのだ。
映画版ではメリル・ストリープ演じるドナが、「やりすぎでは?」と思うほど前に出ていたが、劇団四季の舞台では、<父親探し>をするソフィの物語が軸を失っていないため、作品に安定感がある。
しかも、この日ソフィを演じた谷内愛は、この役にうってつけの人材。明るくキュートで芯がある。まるで宮崎駿の作品にでも出てきそうなヒロイン的な雰囲気。しかも——これが重要なのだが——歌に魅力がある! 粘着質でもなく、大仰でもなく、プレーンさと透明感さを兼ね備えた彼女の歌声は、この日の最大の見どころ(聴きどころ)であった。
一方のドナは、映画版よりも素直さに欠け、やや垢抜けないイメージ。ソフィの結婚を心の底から喜んでおらず、そのことがソフィとの確執を生む。が、そのリアルな描写が、終盤、母が娘を送り出すシーンで大きな“てこ効果”を発揮。巣立ち行く愛娘の前で初めて見せるドナの素直な親心が、静かな感動を誘う。
そのシーンで歌われる「Slipping Through My Fingers(手をすり抜けて)」は、この日のベスト曲だ。入り交じるドナの喜びと寂しさが、親子という関係の尊さを映し出す。ややクセがありすぎるドナの元カレ3人衆の存在や、クライマックスでの強引ハッピーエンドが笑って許せるのも、親子の絆を描いたドラマが凛とあるからだ。
残念だったのは、クルクルと回転するだけのセットを含め、舞台美術にあまり工夫が感じられなかった点だ。美しいエーゲ海をリアルに表現してもらいたかった、とまでは言わないが、劇団四季の力量をもってすれば、もう少し舞台美術に意外性があってもよかった。
カーテンコールでは、キャストと観客が一緒になってABBAの楽曲を楽しむサービス付き(劇団四季の「マンマ・ミーア!」ではおなじみ)。キャスト全員がその日のシメとばかりに汗まみれになって歌い&踊る姿は、(とくにABBA世代の)観客を大いに満足させる。この演目は、やはりABBAの音楽を楽しむものなのだ。
【オリジナルクリエイティブスタッフ】
台本:キャサリン・ジョンソン 演出:フィリダ・ロイド 振付:アンソニー・ヴァン・ラースト プロダクション・デザイン:マーク・トンプソン 照明デザイン:ハワード・ハリソン 音響デザイン:アンドリュー・ブルース、ボビー・エイトキン 音楽スーパーバイザー 追補及び編曲:マーティン・コッシュ
【日本スタッフ】
企画・製作:浅利慶太 日本語台詞:浅利慶太 演出協力・日本語版台本:湯川裕光 音楽スーパーバイザー:鎮守めぐみ 振付スーパーバイザー:古澤勇 技術監督:滑川武
トラックバック
トラックバックURL:
http://yamaguchi-takuro.com/mt/mt-tb.cgi/497
